ショートスリーパーって誰でもなれるの? 研究者が語る真実
仕事や家事に追われ、自由時間がほとんどないと感じる現代人にとって、ショートスリーパーは憧れの的です。
ショートスリーパーとは、1日の睡眠時間が4–6時間未満でありながらも、日中の活動や健康に支障をきたさない人々を指します。
しかし、その体質は誰でも身につけられるものではなく、遺伝的な要因が大きく関係しているのです。
参考文献
The ones who need little sleep
https://knowablemagazine.org/content/article/mind/2024/genetics-of-people-who-need-little-sleep
ショートスリーパーには優秀な人が多い?
ショートスリーパーは、その短い睡眠時間を活かして多くの成果を上げることで知られています。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、さらにはエジソンやナポレオンといった歴史的な偉人たちも、短時間睡眠で活躍した人物としてよく挙げられます。
エジソンは“人間には4時間以上の睡眠は不要”と豪語し、自ら発明した白熱電球で人々の生活に革命をもたらしました。
一方で、長時間睡眠が必要な天才も存在します。
アインシュタインは1日10時間寝ていたことで有名で、日本の漫画家水木しげるも十分な睡眠を取ることで創造性を維持していました。
このように睡眠時間と優秀さとの関連性には個人差があり、ショートスリーパーであることが成功の条件とは限りません。
それでも、多くの人が自由時間を増やすためにショートスリーパーを目指そうとしています。
ショートスリーパーは誰でもなれるのか?
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の神経科医ルイス・プタチェク氏は、ショートスリーパーに関する長年の研究から、「ショートスリーパーになれるかどうかは遺伝的な素質に大きく依存する」と結論づけています。
彼の研究では、ショートスリーパーが多い家系の遺伝子を調査した結果、「DEC2」と呼ばれる遺伝子に突然変異があることを特定しました。
この変異は、覚醒を促す脳内ホルモン「オレキシン」の分泌を増加させ、少ない睡眠でも十分に覚醒状態を維持できる体質をもたらします。
さらに、同様の遺伝子変異が他の家系でも発見されており、「ADRB1」や「NPSR1」などもショートスリーパーと関連があるとされています。
これらの発見から、ショートスリーパーは生まれつきの遺伝的特性であり、後天的な習慣だけでショートスリーパーになることは極めて難しいとされています。
無理なショートスリーパーのリスク
ショートスリーパーに憧れて睡眠時間を削る試みは、健康リスクを高める可能性があります。
一般成人に推奨される1日の睡眠時間は6–8時間であり、これを大幅に下回る睡眠時間が続くと、集中力の低下、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、がんなどのリスクが増大します。
また、慢性的な睡眠不足は、心身の不調を引き起こし、生産性の低下を招くこともあります。
もしショートスリーパーを試してみて日中にだるさや眠気を感じるようであれば、それは体質的に合わない可能性が高いです。
その場合、無理に睡眠時間を削るのではなく、6時間以上の睡眠を確保した上で、効率的な時間管理や生活習慣の見直しを検討する方が良いでしょう。
ショートスリーパーに挑戦する前に
ショートスリーパーは、特定の遺伝子を持つ一部の人々に限られる体質であり、一般の人が同じような睡眠習慣を無理に取り入れるのは危険です。
自由時間を増やしたいという願望は理解できますが、その方法としてショートスリーパーを目指すよりも、起きている時間を有効活用する工夫をする方が現実的です。
また、十分な睡眠を取ることは、心身の健康を保つ上で欠かせない要素です。
睡眠の質を向上させるために、規則正しい生活リズムやリラックスできる環境作りを心がけることをお勧めします。
ショートスリーパーを目指す前に、自分自身の体質や生活スタイルをよく考え、無理のない選択をすることが大切です。