ゲームに関する論争の一つに「暴力的なビデオゲームは人の攻撃性を高める原因になるのか?」というものがあります。
しかし、数多くの研究からこれを否定する証拠が増えてきていますが、ついにこの議論を終わらせる大規模な調査研究が発表されました。
なんと、人気の暴力ゲームを長時間プレイした子供とそうでない子供を比較した結果、攻撃性の有意な増加は見出せなかったと報告しているのです。
10年以上にわたる継続調査の結果は、暴力的な傾向が暴力的なビデオゲームに起因しないことを裏付けているのかもしれません。
暴力要素の高いゲーム「GTA」にこだわった研究
今回この研究の特徴的なところは、10年間にも及ぶ継続的研究であるということと、研究で注目するゲームタイトルをGTA(グランド・セフト・オート)1本に絞ったというところです。
これまでも暴力的なゲームの影響について調査した研究はたくさんありますが、プレイされたゲーム内容が明確に考慮されていなかったり、短期間の影響を調査したものだけだったりしました。
長期の継続的研究を行う場合、同じ変数を繰り返し記録し続けるというのは、データとしては非常に理想的と言えます。
しかしこのような研究は、とても長い期間の調査が必要になるため、ビデオ研究としては非常にまれなものになります。今回、そんな研究をアメリカの医療関係企業が長期にわたって実施することで実現したのです。
グランド・セフト・オートは、ギャング映画をゲームとして成り立たせた内容になっており、街中の激しい銃撃戦や薬物使用、強盗といった犯罪が絡むストーリーが中心となって展開されていきます。
自由度が高いことも売りの1つとなっており、プレイヤーの行動にはほとんど制限がありません。通行人を銃で殺したり、車を奪ったりといった反社会的な行動もプレイヤーの意思で自由に行うことができます。
そういった内容になっているため、暴力ゲームの影響が議論される時は必ずと言って良いほど矢面に立たされるゲームとなっています。
この研究では、平均年齢約14歳の子供約500人が集められ、グランド・セフト・オートのプレイ頻度などのアンケート調査を実施しています。
10年という調査期間の開始時と終了時には、参加者それぞれの攻撃性に関する要因として、不安・抑うつ・社会に利益をもたらす行動などが測られ増田。
つまり、子供時代から成人後までのGTAのプレイ状況と攻撃性の変化が比較されたのです。
では、どのような結果が出たのでしょうか?
GTAなどの暴力ゲームに対するプレイの傾向と成長後の影響とは
この調査では、10代の若者が暴力的なゲームをプレイする際に3つのグループに分けられたと言います。
グループ1は、人生の早い段階から長時間プレイしましたが、歳を取るに連れて急激にプレイ時間が減りました。
グループ2は、10代のうちに中程度のプレイを続け、成人するとプレイ時間がわずかに増加しました。
グループ3は、最大のグループとなり、子供の頃はほとんどプレイしていませんでしたが、歳を取るに連れてプレイ時間が増えて行きました。
子供の頃、非常にゲームに熱中していたグループが成長するとプレイ時間が減る傾向は、保護者の介入があった可能性が考えられます。
これらのグループで成人期の攻撃性の比較を行ったところ、子供の頃にGTAに熱中した子供達と、子供時代にほとんどGTAで遊ばなかった子供たちの間には有意な差が見つかることはありませんでした。
この研究で調査対象となった子供の中には、13歳で何時間もGTAをプレイしている子もいました。それでも10年後、攻撃性に他の子供との有意な差は見つけられなかったのです。
この研究結果では、成長の初期段階に暴力的なゲームをプレイすることは、後の人生における攻撃性の予測にはつながらないということが示されています。
しかし、あらゆる研究にいえることですが、研究で得られる結果には制限があります。
今回の研究データは自己申告によるアンケート調査を基本としています。ここにはある程度の偏りが生じている可能性があるため、攻撃性やゲームプレイ時間の正確な値が示されていないことも考えられます。
しかし、長期にわたって非常に多くの参加者を用いた今回の調査は、研究としては実行可能でもっとも信頼性のある方法の1つと言えます。
この結果を無視して、暴力ゲームの悪影響を問題にすることが今後は難しくなるといえるでしょう。