お化け屋敷に入ると健康になる?!体内炎症を緩和させる可能性が見つかった?

適度なストレスは私たちにとってプラスに働くことがあります。例えば、遊園地のジェットコースターに乗る前って物凄く緊張しますよね。ですが、乗った後は達成感や高揚感で満たされませんか。

これは、ジェットコースターという緊張や不安などのストレスを乗り越えたことによって起こります。

それ以外にも精神的にプラスに働くことがあるのは分かりますが、一方で身体的にはプラスに働いているのでしょうか

デンマークのオーフス大学の研究によると、お化け屋敷に入った人の血液サンプルを採取し分析した結果、お化け屋敷で体験した恐怖が免疫系にプラスの影響を与えている可能性があることがわかりました。

恐怖が免疫系に良い影響を与えるとは、一体どういうことなのでしょうか。

研究の詳細は2024年11月13日付で医学雑誌『Brain, Behavior, and Immunity』に掲載されています。

参考文献

The health benefits of fright: A haunted house study

https://medicalxpress.com/news/2024-11-health-benefits-fright-house.html#google_vignette

元論文

Unraveling the effect of recreational fear on inflammation: A prospective cohort field study

https://doi.org/10.1016/j.bbi.2024.10.036

デンマークの大学がお化け屋敷に注目した理由

近年、「レクリエーションとしての恐怖」が注目されています。例えば、エクストリームスポーツやホラー映画、お化け屋敷などはそのひとつです。なぜ自ら恐怖やスリルを求めるのか、それによって体や心にどんな影響が起こっているのかなどが、注目の研究テーマになっています。

動物の場合、恐怖が生物の免疫系を活性化し、潜在的な外傷や感染に先手を打って備えることが分かっています。一方で、人間の場合、恐怖がアドレナリン系を活性化させることは分かっていますが、それが免疫系に与える影響などは分かっていません

また、免疫が異物から体を守ろうとする時に起こる「体内炎症」への効果も分かっていません。体内炎症は、誰の体の中でも起こっている免疫反応ですが、慢性化するとがんや高血圧などの病気にかかりやすくなってしまいます。

そんな中、オーフス大学の研究チームは「レクリエーションとしての恐怖が炎症に与える影響の解明(原題:Unraveling the effect of recreational fear on inflammation: A prospective cohort field study )という研究を発表しました。

研究チームは、デンマークのヴァイレにあるお化け屋敷を訪れた成人113名を対象に、恐怖が免疫系に及ぼす影響を調査しました。

113人のうち女性は69名男性は44名平均年齢は29.7歳です。お化け屋敷は1時間ほどの長さで、殺人ピエロ・ゾンビ・血まみれのエプロンと豚のマスクを着用してチェーンソーを振り回す人物などに襲われます。

調査方法は、心拍数の測定・アンケート調査・血液サンプル採取の3つです。血液サンプルは、お化け屋敷に入る前・出た後・お化け屋敷を体験した3日後に採取し、炎症の程度や免疫細胞の量を分析することに使いました。

お化け屋敷での恐怖が免疫系に良い影響を与えている

心拍数は平均で111.5bpm、アンケート調査で主観的に報告された恐怖レベルは9段階中、平均5.4でした。

血液分析の結果、22名の参加者はお化け屋敷に入る前に低度の炎症が見られました。ここでは、血中の高感度CRP(hs-CRP)値が3mg/ⅼを越えると低度の炎症だと定義しています。高感度CRP(hs-CRP)とは、体内炎症を検知できる炎症マーカーと言われています。

以下の表1は、低度の炎症グループと正常の炎症グループのhs-CRPと総白血球数が、イベント前からイベント後3日目に変化した数値をまとめた表です。

〈表1〉

引用元:Elsevier,Unraveling the effect of recreational fear on inflammation: A prospective cohort field study,ScienceDirect,2024年11月3日更新,2024年12月8日最終アクセス

表1を見ると、低度の炎症があった22名は、お化け屋敷を体験した3日後にhs-CRP値が平均5.7mg/ⅼから3.7mg/ⅼまで低下しています

加えて、22名の総白血球が平均9.00×10^9/ⅼから8.02×10^9/ⅼまで減少しています。また、正常な炎症だった残りの91名も同様に平均8.36×10^9/ⅼから7.76×10^9/ⅼまで減少しています。

研究チームは「これらの結果は、娯楽環境における恐怖が免疫系に良い影響を与える可能性があることを示唆している」と述べました。つまり、お化け屋敷に入ると体内炎症を緩和させるという健康上のメリットがあるかもしれません。

もし、より明確な有効性が確認されたら、新たな健康法としてお化け屋敷に入る人が増えるかもしれません。サウナの次はお化け屋敷かも。友人やパートナーをお化け屋敷に誘う口実にしてみてはいかがでしょうか。

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