交代勤務や旅行者必見!概日リズムの乱れに負けない代謝の秘密

人間の体には、睡眠や代謝などを24時間周期で調整する仕組み、いわゆる”概日リズム”が備わっています。

このリズムは、日常生活の中で自然に環境に適応しますが、時差のある場所への移動や交代勤務、夜更かしといった要因で乱れることがあります。

この乱れを「概日リズムの脱同期」と呼び、これが長引くと健康に悪影響を及ぼすことが知られています。例えば、血糖値のコントロールが乱れたり、代謝機能が低下したりする可能性があります。

これまでの研究では、12時間という大幅な概日リズムのズレが代謝に与える影響が調査されてきましたが、より小さいズレ、例えば5時間程度の変化については、まだ十分に理解されていませんでした。

このたび、イギリスのサリー大学などの研究チームが行った実験により、代謝が脳よりも早く概日リズムのズレに適応できるという興味深い事実が明らかになりました。

参考文献

Short-term changes in human metabolism following a 5-h delay of the light-dark and behavioral cycle: iScience

Jet lag: your metabolism recovers quicker than your brain – new study

5時間のリズムずらし実験

研究では、45歳前後の健康な男女を被験者として選び、1日目は通常の生活リズムで過ごしてもらい、2日目からは就寝時間を5時間遅らせることで概日リズムにズレを生じさせました。

その後、脳内時計を示す指標であるメラトニン濃度や、主観的な眠気と覚醒感を測定しました。

さらに、血液を採取して代謝のバイオマーカーも分析しました。

この実験では、5時間のリズムのズレが発生した直後から、夕方の眠気が増し、覚醒度が低下することが確認されました。

同時にメラトニン濃度も変化し、体内時計の調整が始まりましたが、実験期間中の5日間では元の状態に完全には戻りませんでした。

一方で、代謝に関しては異なる動きが見られました。

食事後のエネルギー消費が減少し、朝食後に胃の内容物が腸へ送られる時間が遅れるなど、代謝関連の多くの変化が観察されました。

しかし、これらの変化はすべて5日間以内に回復し、一部の指標は3日以内に正常値へと戻りました。

この結果から、代謝の回復が脳内時計や主観的な眠気に比べてはるかに速いことがわかります。

代謝と脳の違い

研究者たちは、脳と代謝が異なる速度で概日リズムに適応する理由をいくつか挙げています。

脳の概日リズムは、主に光によってリセットされる仕組みがあり、その調整には時間がかかることがあります。

一方、代謝は食事のタイミングや量、内容に大きく影響されるため、比較的速く環境の変化に対応できると考えられています。

この発見は、時差ぼけや交代勤務といった生活リズムの乱れに悩む人々にとって有益な情報です。

特に、長時間の飛行機移動や夜勤で健康リスクを抱える人々にとって、食事や運動のタイミングを調整することで代謝機能を速やかに回復させる可能性が示されています。

交代勤務や旅行での活用

交代勤務や頻繁に飛行機を利用する生活を送る人々は、今回の研究をヒントに、体調管理の方法を改善することができます。

例えば、出発前に少しずつ食事時間を変更したり、到着地の時間に合わせた食事や軽い運動を取り入れることで、代謝の回復を早めることが期待できます。

また、夜勤明けや時差ぼけの際には、無理をして睡眠を取るよりも、食事を工夫して代謝を正常化させることに意識を向けるのも効果的かもしれません。

研究チームは、「概日リズムのズレが代謝に短期的な影響を及ぼすものの、その影響は比較的小さく、回復も早いことが分かりました。この知見は、交代勤務者や頻繁に飛行機を利用する人々に役立つ可能性があります」と述べています。

今後の研究の可能性

この研究は、概日リズムのズレに関する新しい知見を提供しましたが、さらなる研究の余地があります。

例えば、5時間以上のズレや長期間にわたるリズムの乱れが代謝にどのような影響を及ぼすのか、また、食事や運動の具体的なタイミングが回復にどう影響するのかといった点です。

これらの研究が進めば、さらに効果的な健康管理の方法が確立されるでしょう。

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