恋愛には多くの謎があります。
その一つに「自分と似た人に惹かれるのか」それとも「自分とは異なる人に惹かれるのか」というものがあります。
明るくて元気な人が内向的で影のある人に惹かれるとか、スラッと背の高い人が小柄でふっくらな人を好むなどなど色々あります。
しかし研究によれば、実際ほとんどの人は自分とよく似た人とカップルになる傾向があることが示されたのです。
「男女の惹かれ合い」に関する心理学における研究

「相反するものは互いに引き合う」なんて言いますが、一方で「似た者同士の方が惹かれ合う」と言う人もいます。
このテーマは心理学においても長い間、研究され議論が交わされてきました。
例をあげるとカークホフとデイビスは、人間がパートナー候補を絞り込む方法を「フィルター理論(The Filter Theory)」を使って説明しました。
この理論では、人間は一連のフィルターを使って、ふさわしい候補者を絞り込むことで、恋愛相手を選ぶと説明されています。
最初のフィルターが社会的属性(物理的な近さ、教育のレベル、社会階級など)次のフィルターは態度の類似性(信念や価値観)、最後のフィルターはニーズの補完性になります。
この理論は他の研究でも支持されています。
たとえばウィンチらは1955年発表の論文で、興味・態度・性格特性の類似性が関係構築の初期には不可欠である一方、相補性が長期的には不可欠であることを発見しました。
一方で、アンダーソンらは2003年発表の論文で、カップルは交際当初から類似しているのではなく、時間の経過とともに類似性が高まることを示しています。
このように、男女の惹かれあいにおける類似性と相反性の理論はたくさんありますが、心理学研究を概観すると類似性を重視する仮説に一貫して支持が集まっています。
今回、紹介する研究でも「似ている人同士が引き合う」と言う結果が示されました。
数百万組のカップルの情報を含む大規模データを使った調査において、研究者らは「パートナーは共有している特徴を持つことが多い」と言う結果を出しました。
宗教や政治などの深い価値観や喫煙・性行為などの経験も含め、パートナーは最大89%の特徴を共有していたのだそう。
一方で、個人が自分とは異なる人とパートナーになる傾向は3%しか見られないことも示されています。
「正反対の相手が引き合うことはほとんどない」とデータは語る

アメリカ・コロラド大学ボルダー校の研究者らは、人間が恋愛や結婚をする時、どれだけ似た特徴を持つ人々と結ばれるかを調査しました。
この研究は2つの分析から成り立っています。
1つは過去の199の研究論文から480のデータを収集し、様々な角度から統合したり比較した分析になります。ここでは、心理学・社会学・人類学などでよく研究される22の特性について、パートナー間の類似性を調査しました。
もう1つは、イギリスの大規模データベースを使用し、約79,000組のカップルの133の違う特性に関する類似性の分析になります。
いずれの研究も、対象となるカップルは男女の組み合わせになります。
その結果、分析した特徴の82~89%において、パートナーは類似している可能性が高いことが明らかになりました。
どちらの分析でも政治・宗教・教育レベル・IQの特定の尺度といった特徴が特に高い相関を示していることが分かったのです。
また、薬物使用にまつわる特徴の相関も高い数値を示し、ヘビースモーカー・大酒飲み・無趣味の人は。同じような習慣を持つ人とパートナーになる傾向が強く見られました。
一方で、身長や体重・病状・性格特性などの特徴は、数値は低いながらも正の相関を示していました。
性的パートナーの数や母乳で育てられたかどうかといったマイナーな特徴も、ある程度の相関関係が見られたそうです。
ちなみに、カップルが最も類似しやすい特徴は生まれ年だったことも分かりました。
ところが、外向性の特徴は相関がみられませんでした。
「外向的な人は内向的な人が好きだとか、外向的な人は他の外向的な人が好きだとか、色々な説がありますが、実際のところ、外向的な人は同じように外向的な人と結ばれる可能性が高いのです」とホーウィッツ氏は言います。
さらなる分析の結果、研究者たちは「異なった人同士が引き合う」という説について「説得力のある証拠はない」との結論を出しています。
負の相関関係があると思われた特性は、聴覚障害・心配性・クロノタイプ(朝型か夜型か)の3つだけだったそうです。
「似たような人をパートナーに選ぶ傾向」が次世代に与える影響とは?

研究者らは、私たちの「似たような人を選ぶ傾向」が次世代に与える影響についてこのように述べています。
「例えば、背が低い人が同じく背が低い人と結びつき、背が高い人が背が高い人と結びつく場合、次の世代では身長の両極端な人が増える可能性が考えられます。精神医学、医学、またその他の特性についても同様の傾向が見られるかもしれません」
さらに、社会的な影響も考えられると研究者たちは指摘します。
同じような教育背景を持つ人とパートナーになる可能性が高まれば、社会経済的な格差が拡大する可能性もあるのです。
実際、アメリカでは同じような教育背景を持つ人とカップルになる傾向が強まっているという報告もあります。
研究者らはこの研究が、より良い形で学問分野を超えた研究のきっかけになることを期待しています。
「私たちは、皆さんがこのデータを使って独自の分析を行い、人々がどのような関係を築くのか、その背景にある理由について理解を深めていただけることを願っています」
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