「吊り橋効果」とは、覚醒状態が高くなる状況に身を置くと、そのドキドキが一緒にいる人の魅力によって引き起こされると勘違いし、通常の時よりも一緒にいる人が魅力的に感じる現象のことを指します。
この心理効果に関する論文は1974年に発表されたのですが、現代でも多くの恋愛テクニックに関する本や番組が、この効果を根拠にデートをする時は遊園地でジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に行くことを勧めています。
しかし、実はその数年後にアメリカ・メリーランド大学のグレゴリー・ホワイト氏らの研究チームが吊り橋効果について検証を行い、そもそも「吊り橋効果」は恋愛対象になるような相手にしか生じず、それどころか魅力を感じない相手に対しては逆効果になってしまうことを報告しているのです。
もしかしたら、吊り橋効果というのは単に相手をドキドキさせればという単純な恋愛テクニックではなく、使いどころを考えた方が良いテクニックなのかもしれません。
ドキドキするから好きになる…吊り橋効果とは?

心理学について調べたことがあるなら、一度は「吊り橋効果」という現象を目にしたことがあるのではないでしょうか。
吊り橋効果とは、覚醒状態が高くなる状況に身を置くと、そのドキドキが一緒にいる人の魅力によって引き起こされると勘違いし、通常の時よりも一緒にいる人が魅力的に感じる現象です。
この現象は、1974年にカナダのブリティッシュ・コロンビア大学のドナルド・ダットン氏らの研究チームが行った実験で初めて確認されました。
この実験に参加したのは、カナダのバンクーバー近郊にあるキャピラノ吊り橋を渡っていた男性18名と低いコンクリート製の橋を渡っていた男性16名です。
キャピラノ吊り橋は、高さが70m・全長140mある吊り橋になっており、多くの観光客が同時に渡るので心拍数の増大や血圧の上昇を引き起こすのに十分な揺れが起きる吊り橋となっています。
実験では、それぞれの橋を1人で渡ってきた男性に実験者の女性が声をかけ、簡単な心理テストに協力してもらっています。
その後「もし実験の詳細な結果を知りたいのであれば、電話してきてください」といい、参加者の男性に電話番号が書かれたメモを渡しています。
もしも、キャピラノ吊り橋の揺れが引き起こしたドキドキが、実験者の女性に対するものであると誤って解釈されたのであれば、男性の参加者はもう一度女性と話をしたいと思い、電話をかけるという行動に出ることが予想できます。
実験の結果、キャピラノ吊り橋で電話番号をもらった男性の約50%が実験者の女性に後日連絡をしてきた一方で、低いコンクリート製の橋で電話番号をもらった男性は約12%しか連絡してこないことが分かりました。
この結果は、人間に身体的な反応が生じた際に、それがどのような感情によって起きた者なのか必ずしも正確に判断できないことを示しています。
こうした吊り橋効果の背景には、社会心理学者のスタンリー・シャクターとジェローム・シンガーによって提唱された情動二要因論が関係すると言われています。
情動二要因論とは、発汗や血圧上昇といった生理的反応そのものが感情を決めるのではなく、その生理的反応が何によって引き起こされたかの解釈によって感情の種類が決まるという考えになります。
魅力的な異性を見た時(出来事)、その人に恋愛感情を抱くと(感情)、相手と話している時にドキドキする(生理反応)と考えるのが一般的です。つまり、人間のドキドキという生理反応は人間の感情によって生じていると考えられます。一方で実験の結果では、逆に吊り橋が揺れているせいで(出来事)、ドキドキすると(生理反応)「何故ドキドキするのか?これは恋かもしれない」という解釈が生まれ、それによって目の前の相手に恋愛感情が生じる(感情)ことを示しているのです。
このように自分の生理反応を誤った感情と結びつけて解釈することは、覚醒の誤帰属と呼ばれています。
ここまでの話は、吊り橋効果の話の中でも有名なものとされています。
しかし実はその数年後に「吊り橋効果」は美人以外では効果がないという可能性を報告した研究が発表されているのです。
“吊り橋効果”は美人でないと発生しないことが判明

吊り橋効果の範囲については、1981年に「Journal of Personality and Social Psychology」に投稿された、アメリカ・メリーランド大学のグレゴリー・ホワイト氏らが行った研究で検証されています。
この研究の実験には男性26名が参加しました。
参加者はメディカルチェックを終えた後、15秒間走る人(あまりドキドキしていない)と2分間走る人(ドキドキしている)の2つのグループに分けて、1人の女性が自己紹介をする動画を見て魅力度の評価をします。
この時に見る自己紹介動画は、同じ女性が服や化粧を変え、魅力度が高い場合と魅力度が低い場合の2パターンを用いています。
実験の結果「魅力度が高い女性」はドキドキしていない場合と比較してドキドキしている時の方が魅力的に評価されたのに対し「魅力度が低い女性」はドキドキしている時の方の魅力度が低くなってしまうことが分かりました。
この結果は「ドキドキが恋愛感情である」と勘違いするためには、そもそも相手に恋愛対象と思ってもらわなければ意味がないということを示唆しています。
もしそうでなければ、走った後の疲れなども影響して、逆に「なんだこいつ」と魅力が低く見えてしまう可能性があるのです。
恋愛を心理学的に解説した本を読んだり番組を見たりすると、吊り橋効果が普遍的な恋愛テクニックとして紹介されていることもあります。
しかしこの効果をよく検証してみると、そもそも好意を持っている相手の魅力を増やすために存在しているものであって、恋愛対象にならない相手には逆効果になってしまうようです。
とはいえ、デートの約束を取り付けるまでに仲が進行しているのであれば、十分に効果があると考えられます。
吊り橋効果は気になる相手だからこそ、ドキドキを恋愛と勘違いして相手の魅力を評価してしまう効果と言えます。
親交がない相手に対して恋愛感情を向けさせる方法としては不向きなテクニックなので、使い時に注意すればあなたの恋愛にひと役買ってくれるかもしれません。
コメント一覧