膝の痛みとは
膝の痛みがあると、何気ない日常の動作が急に負担に感じられることはありませんか?
歩くだけで膝がズキズキしたり、階段の上り下りがつらくなったり、好きだった運動をあきらめた経験がある人も多いのではないでしょうか。
「少し休めば治るから大丈夫だ」と思いながらも、気づけば症状が長引いて不安を感じている人も少なくないはずです。
このように、膝の痛みは多くの人が経験し、生活の質を大きく左右しますが、正しい対策を取れば改善の可能性が十分にあります。
今回は、膝の痛みに関する原因や治療法・予防法を解説し、膝の痛みが改善できるのかをお伝えします。
膝の痛みの原因
膝の構造について
膝関節は、人体の中でも非常に複雑で重要な関節の1つです。主に次の部分で構成されています。
関節軟骨
骨と骨の接触部分を覆い、動きを滑らかにするとともに、衝撃を吸収する役割があります。関節軟骨がすり減ると、痛みや炎症の原因になります。
半月板
脛骨の上にあるC字型の軟骨で、外側と内側に1つずつ存在します。クッションのように衝撃を吸収し、膝の安定性を保つ役割を果たします。
靭帯
靭帯は、膝関節を安定させるための強力な線維組織です。前十字靭帯(ACL)・後十字靭帯(PCL)・内側側副靭帯(MCL)・外側側副靭帯(LCL)が存在し、前後左右への不安定感を抑制する作用があります。
主な原因
変形性膝関節症
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝関節の軟骨が徐々にすり減り、関節の変形や痛み、動きの制限を引き起こす疾患です。中高年の方に多くみられ、加齢や過剰な負担が主な原因となります。
関節リウマチ
関節リウマチは自己免疫疾患の一種で、免疫系が自身の関節組織を攻撃することで関節の炎症や痛み、腫れを引き起こします。進行すると関節の破壊や変形を招き、生活の質に影響を及ぼします。
スポーツや外傷による損傷
スポーツや外傷によって引き起こされる膝関節の疾患には様々な種類があり、いずれも膝への過度の負担や突然の衝撃が原因となることが多いです。
加齢や筋力低下
加齢や活動性低下により筋力低下が生じると、膝関節を保護する機能が失われてしまいます。膝関節を保護する機能が失われることで膝関節の軟骨が徐々にすり減り、痛みや動きの制限を引き起こします。
運動不足や肥満などの生活習慣要員
運動不足や肥満により体重が増えると、膝関節にかかる負荷も比例して大きくなります。特に歩行や階段の上り下りでは体重の2~3倍の負荷が膝にかかるとされています。
肥満の状態が続くと膝関節の軟骨が摩耗しやすくなり、やがて変形性膝関節症に繋がります。
膝の痛みの改善方法
保存療法
膝関節痛の保存療法は、手術を行わずに痛みや症状を緩和し、関節の機能を改善するための治療法です。主に変形性膝関節症やスポーツ障害などで膝関節痛を抱える患者に適用されます。
⒈薬物療法
痛みの緩和と炎症の抑制を目的に行われます。「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」や「アセトアミノフェン」などの飲み薬だけでなく、「ヒアルロン酸注射」や「ステロイド注射」などの関節内注射で対応する場合もあります。
⒉リハビリテーション(理学療法)
理学療法士の介入によって、筋力強化や柔軟性向上を図る場合もあります。筋力トレーニングやストレッチ、関節可動域訓練や低負荷の有酸素運動などを行い、膝関節への負担を軽減させることを目標とします。
⒊装具療法
膝関節の負担軽減のため、以下のような装具を着用します。
・膝サポーター
関節の安定性を高め、動作時の痛みを軽減させる。
・インソール(足底板)
歩行時の衝撃を吸収し、膝のアライメントを改善させる。
・杖や歩行補助具
体重を分散させて膝関節への負担を減らす。
保存療法のメリットは手術を避けることができること。ただし、効果が一時的な場合もあるため、継続して通院する必要があります。
医療介入(手術療法)
膝関節症に対する医療介入は、症状の進行度や患者の生活の質に応じて選択されます。一般的には保存療法から始め、効果が不十分な場合に手術療法が検討されます。
⒈関節鏡手術
小さな切開を行い、カメラで関節内を観察しながら軟骨や半月板の損傷を修復します。侵襲が少なく、回復が早いことが特徴です。
⒉高位脛骨骨切り術(HTO)
膝の荷重バランスを調整するために、脛骨(すねの骨)を切って角度を変える手術です。膝関節を温存しつつ、症状の改善が期待できます。
⒊人工膝関節置換術(TKA)
損傷した膝関節を人工関節に置き換える手術です。痛みの劇的な改善と、関節の機能回復が期待できます。
手術を行うことで痛みの根本が改善されるため、劇的に改善することが期待できます。しかし、手術後は入院してリハビリを行う必要があるため、入院期間がある程度かかってしまいます。
膝の痛みを予防する方法
膝の痛みを予防するためには、膝関節に負担をかけない生活習慣を心掛けるとともに、筋力や柔軟性を高める運動を取り入れることが重要です。以下に具体的な予防方法を紹介します。
適切な体重を維持する
- バランスの取れた食事を心掛ける(高たんぱく・低脂肪、適量の炭水化物)
- 有酸素運動(ウォーキング、サイクリングなど)で消費カロリーを増やす。
有酸素運動の目安は「やや疲れた」と感じる程度がオススメです。無理なく継続できる負荷にしましょう。
筋力を鍛える
膝を鍛える筋肉(特に大腿四頭筋やハムストリングス)を強化することで、膝関節への負担を軽減できます。
おすすめの筋力強化メニュー
①レッグレイズ(膝を曲げない腹筋運動)
・仰向けに寝て、片脚ずつゆっくり持ち上げる。
②スクワット
・膝をつま先より前に出さないよう注意して浅く曲げる。
③カーフレイズ
・つま先立ちを繰り返し行い、ふくらはぎの筋力を強化する。
筋力強化のためには回数は10~20回が理想です。セット数は2セットを目安にしましょう
症状が続く場合の対処法
予防法に取り組んでも膝の痛みが続く場合は、専門医の診察を受け、原因を特定することが重要です。特に以下の場合は早めに受診するようにしてください。
- 腫れや熱感がある
- 可動域の制限(膝が曲げ伸ばしできなくなる)
- 起立・歩行が困難になっている
上記の状態がある場合、一般的に病院では画像検査(X線、MRI)や血液検査を行います。
膝の痛みは改善できる!
適切なケアと予防を継続することで、膝の痛みは改善する可能性が高いです。そのためには、自分に合った治療法や予防法を実践することが重要であり、必要であれば専門家に相談する勇気を持つことが大切です。