重大な決断をしなければならない時や、人から判断を仰がれた時、知見や情報を多く持っている方が良い判断ができると考える人は多くいるでしょう。
しかし、判断をする際に集めた追加の情報が判断するまでの精度を半数以下に下げる事があるようなのです。
もしかしたら今、あなたが抱えている問題も調べすぎることによってなかなか解決しない…なんてことがあるかもしれません。
アメリカの研究チームが「本当に情報が多い方が判断精度が良くなるのか?」を検証
何かを決める時に調べたりニュースを見たりといった情報を集めるのは、判断精度を上げるための基本中の基本行動になります。
情報を集めることで状況の把握やリスク回避といった多様性の考え方を持つようになり、バイアス、つまり偏りを避けることができます。
また、より多くの情報を得ることで、自分の判断力に対する自信も高まるため、確信を持って決断することができるようになります。
しかし、アメリカのスティーブン工科大学のミン・ジェン氏らによると、必ずしも判断をする時に追加情報が判断に対してプラスに働かないことが報告されています。
研究チームらは、新しく得た追加情報により判断精度が本当に上がるのかを調査しました。
行われた実験では「2型糖尿病」の症状改善に必要な行動について選択問題を出し、糖尿病改善について追加情報を与える場合と与えない場合での2チームに分けて正解率を比較しました。
結果、追加情報を与えられたチームは与えられなかったチームと比較して問題の正解率が下がることが確認されました。
この結果を受け、研究チームは「過去に経験がある事柄についての追加情報は判断決定の邪魔になり、精度を下げるのでは」と考察しています。
経験があることに対する判断の追加情報は判断力を鈍らせることが判明
さらに研究チームは経験の有無をより明確にするために2型糖尿病をテーマにした追加実験を行いました。
研究チームは対象者を「問題以外の情報を与えないグループ」と「摂取制限や運動が2型糖尿病に与える影響の図解を見るグループ」に分けて問題を出すというものです。
結果、過去に糖尿病になったことがある人は追加情報がない場合、問題の正解率が高くなりました。
一方で糖尿病患者を世話した事がある人と、糖尿病に罹った事がない人は、追加情報があった時の方が正解率が高くなったのです。
これは、自分が糖尿病に罹ったことで色々調べて詳しく知っていた人は、追加情報を与えると正解の精度が下がる可能性を示しています。
参考情報が増えた方が、考えるための判断材料が多くなるはずなのに、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
そのキーポイントは「因果情報」になります。
因果情報とは「運動不足が体重増加につながる」というように、ある結果がどのような要因から生じるかについての情報になります。
これは一見、何かを決断するために役立つ情報に見えます。
しかし、ある事象に対してもともと知識を持っている場合、この因果情報に自分の知識と矛盾する部分があると、自分の知識に対する自信度が低下してしまうのです。
人間には、自分が過去に学んだ知識や経験を基にした判断のための認知・メンタルモデルというものが存在します。
追加の情報を得た場合、人間はこのメンタルモデルに沿うように情報の更新を行っていきます。
しかし、すでにあるメンタルモデルと追加で得た新しい情報に食い違いが生じてくると、本当に自分の判断が正しいのかどうか疑ってしまうのです。
知識や情報はどんどん得て、更新していくことでより正しい判断ができると考える人は多くいるでしょう。
ですが、追加情報を得ることは時に諸刃の剣になってしまう事があるようです。
色々悩んで口コミも見て選んだけど、あまり良い買い物ではなかった、思ったほどのお店ではなかったなんて経験がある人もいるのではないでしょうか。
得た情報量が過多だと逆に判断を誤らせてしまう原因になってしまいます。
たまには情報収集を程々にして、自分の知識を信じて決断をした方が、良い結果に結びつくこともあるのかもしれません。