生きていれば誰もが一度は願う「幸せになりたい」という感情。
しかし、本気でそう願っていても本当に幸せになれる人は世の中にどれ程いるでしょうか。
京都大学に所属するクアン・ジュ・ファン氏は、8,000人のオランダ人を対象に研究を行ったところ、ぼんやりと「幸せになりたい」と思っている人は、長い間プレッシャーを抱え、幸せになりたいという願いとは裏腹に、幸せ度が上がっていかないと報告しました。
このことから、本当に幸せになりたいのであれば、ただ漠然と「幸せになること」を求めるのではなく、幸せになるための具体的な行動を目標とするべきことが判明したのです。
「幸せ」に重きを置いている人は本当に幸せを掴むことができるのか?
近年では、多くの人が己の幸せを願い、人生における目標としている傾向があります。
こうした傾向の背後には、社会的な価値観の変化や生活水準の向上が関係しています。
ただ単にその日を生きるのではなく、より良い生活を求める気持ちが生まれるようになりました。
さらに、SNSが身近になった今、自分と他者を比べて「周りはこんなに幸せなのにどうして自分はこんなことになっているのだろう…」と思いやすくなりがちな時代にもなっています。
今回ファン氏は、オランダの一般家庭を対象に長期間に渡って行われるインターネット調査のデータを利用し、幸せを目標にすることとその結果を分析しました。
研究の参加者は毎年、下記の項目を評価・報告していました。
・自分にとって幸福であることの重要性
・生活満足度、肯定的および否定的な感情の報告
これらの情報を集めての分析結果はどうなったのでしょうか。
ぼんやりと「幸せになりたい」という人は、人を追い詰め、プレッシャーを与える
ファン氏による研究分析の結果、幸せを常に重視する人は全体的な幸福度が高い傾向にあることが判明しました。
ここまでは予測ができますが、今回の研究ではもう1つ大切なことが明らかになりました。
それは「幸せになりたい」という目標を持っている他人は、その目標に応じて幸福度が向上していく訳ではないということです。
ファン氏は「“幸せになりたい”という目標に注目すればするほど、幸せになりたいという目標を達成しなければならないというプレッシャーを感じやすくなったり、幸せが得られるかどうかを過度に心配する」と説明しています。
幸せになりたいと思うのは自然なことですが、それを人生の目標にするとなった場合、あまりにも漠然としているため何を持って幸せになれたかというところが判断しづらくなります。
その結果、自分は本当に幸せなのだろうかと悩んだり、周りの人間と比較して自分ももっと幸せにならなきゃとプレッシャーや不安が強くなってしまいます。
今回の研究では「幸せになること」を人生の一番の目標として追及するべきではないことを示しています。
だからこそファン氏は幸せというものを目標ではなく「自分が最終的に得られる結果・副産物」と捉えるよう勧めています。
つまり、幸せになりたいという漠然とした目標を持って無闇に動くのではなく、自分が幸せになるためには何をしたら良いかという具体的な目標に焦点を当てた方が良いのです。
例えば「好きな人や友達と楽しい時間を過ごす」「行きたいところに旅行へ行く」といった活動を目標に挙げることで自ずと幸せという感情はついてきます。
これは恋愛にも言えることで、ただ「パートナーが欲しい」というだけではなかなか理想のパートナーに出会えず「パートナーが欲しいから出会いの場に積極的に赴きたい」「自分の理想のパートナーはこういう人だからそれに見合う人間性を磨きたい」といった具体的な目標を設定することで、運命の人と出会うことができるかもしれません。
具体的なことを目標にして1つ1つ達成していけば、自分は果たして幸せなのだろうかとずっと考えることなく、いつまでも幸せでいられますし、幸せをどんどん掴むことができるのです。