リンゴにもヘタがある?意外と知らないリンゴの進化と生存戦略

リンゴのヘタがどこにあるかご存じでしょうか。
ミカンやトマトのヘタは柄の付根にあり、すぐにイメージできます。ところがリンゴの柄の周りを探しても、それらしいものは見つかりません。リンゴにはヘタがないのでしょうか。

その答えを知るためにリンゴを眺めまわしてみると、柄とは反対の底のくぼんでいる部分に黒くてとげとげしたものが見つかります。実はこれがリンゴのヘタです。そう、リンゴのヘタは上部ではなく、底についているのです。

ではなぜリンゴのヘタは底についているのでしょうか。その秘密はリンゴの生存戦略に隠されています。

リンゴの戦略を理解するために、まずは植物の成り立ちから確認していきましょう。

参考文献:面白くて眠れなくなる植物学、稲垣栄洋著

そもそもヘタって何?

初めにそもそもヘタとは何かを確認しておきます。下にある花の模式図を見てください。
ヘタとはがくの部分が成長に合わせて変化したものです。ちなみに胚珠が種子に子房が果実になります。つまり私達が食べるリンゴやミカンは花が変化したものなのです。

そうであれば、リンゴのように柄→果実→ヘタとなるのはやはり違和感があります。花が茎→がく→子房の順に並んでいるので、柄→ヘタ→果実の順になるとが普通です。ではなぜこのような順になったのでしょうか、ここからが本題です。

植物の進化

リンゴに限らず全ての植物は子孫を残すために存在しています。子孫を残すことが目的なら、最も大切なのは種子です。ところが昔の植物は裸子植物と呼ばれ、種子の元である胚珠ががむき出しでした。そのため胚珠が乾燥や紫外線、外傷などにより傷つけられる危険にさらされていました。

そこで胚珠を守るために、子房をもつ植物が生まれました。これが被子植物です。これだけでもすごいことですが、植物はここからさらに進化を続けていきます。

植物は子房を果実に成長させ、鳥や動物などに食べさせることにしたのです。これにより、種子をより遠くに運べるようになりました。種子が遠くに散らばれば、それだけ地理的なリスクを減らすことができます。

ところがこの方法も万全ではありません。もともと種子を守るためについていた果実が食べられてしまえば、再び種子がむき出しになるからです。そこで種子を守ったまま、実を食べさせたれないか、と考え進化したのがリンゴです。

リンゴの実は果実じゃない?

種子を守ったまま、実を食べさせるため、リンゴはどんな戦略を編み出したのでしょうか?
なんと胚珠を守る子房をさらに花托(かたく)という部分で覆ったのです。

花托とはがくと柄の間にある少し膨らんでいる部分のことです。そしてこの花托が成長することでリンゴの実になるのです。つまり私たちが普段食べているのは、本当のリンゴの果実ではなく、茎(花托)の成長した部分だったのです。

ちなみにリンゴの本当の果実は、私達が食べ残す芯の部分です。しっかり種子を守っていますね。

再びヘタの話

話をヘタに戻します。
リンゴの胚珠と子房は花托に包まれています。言い換えると胚珠と子房は花の奥、がくの下まで引っ込んだところにあります。そしてそのまま花托がリンゴに成長するので、がくの位置が柄の付け根ではなく、底側にくるのです。

このような植物のことを偽果といいます。偽果はリンゴ以外にもあるので、果物を食べる際はぜひ確認してみてください。

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